塀の中にいるタイ人女性からSOS



知り合いのタイ人女性から手紙が来て小菅にある拘置所に行くことになった。

代々木から秋葉原に行き、乗り換えて小菅駅に到着。ホームを降りると、進行方向に向かって右側に要塞のような建物が建っている。これが小菅拘置所なのかと思いながら駅の階段を降りた。改札を出て駅の出口の内側に地図があった。先ほど見えた建物はやはり拘置所だった。小菅駅を出て反時計回りに2つ角を曲がると面会入り口がある。そうそう、小菅駅を出て最初の角を曲がるところの右側に東急スーパーがある。拘置所に行くことばかりを考えているとこのスーパーの存在にまったく気が付かない。このスーパーで塀の中に居る人への差し入れの品物を買うのが良いかもしれない。

拘置所の入り口前にはよくある3業種の店があった。右から喫茶店、弁護士事務所、差し入れ専門の売店。この売店で買わなくても、最終的に拘置所の中にある売店でも買うことができる。この売店で買ったものは2つのお菓子。ここで買った物は拘置所の中に面会者が持っていくことはできない。売店の人が拘置所に運ぶというルールらしい。塀の中にいる人には翌日届くそうだ。

拘置所の中に入った。面会申込書を書いて2F 141番の赤い紙をもらって、国会中継をやっているテレビの前にあるソファに座った。よく病院や市役所にあるような形のソファだ。テレビに向かって左の掲示板に2Fの段に141という文字が表示されてテレビに向かって右側方向にある面会入り口に進んだ。塀の中のタイ人女性に渡そうと思って持っていた月刊ワイワイタイランドは自分では中に持って行って相手に渡すことが出来ないということで、差し入れの窓口に行くことにした。差し入れ窓口は午後の3時30分まで。時計は3時10分になっていた。

急いてテレビに向かって左方向の一番奥にある差し入れ窓口に向かった。差し入れ窓口は3つの種類に分かれていた。一番右が現金の差し入れ。真ん中が雑誌や新聞類だ。僕は真ん中の窓口に月刊ワイワイタイランドを8冊渡した。防弾ガラスのようなものの向こうにいる受付の女性はマスクをしていて何を言っているのか声が小さくてまったく聞こえない。耳を澄ますと、差し入れの本は3冊までということを言っているのが理解できた。僕とは相性が悪いのか、やりとりがギクシャクした。もしも外の居酒屋さんとかでこの女性と隣同士になったりしたらきっと仲良しになれたのかもしれないが、ここで会ったというのが良くなったのかもしれない。どうも気に入らない。相手もきっとそう思っているに違いない。

差し入れが住んで時計は3時20分。急いでテレビに向かって右方向の一番奥にある面会入り口方向に小走りに急いだ。するとその瞬間に背後から「遠藤さん」と言う声がした。こういうところで呼ばれるほど知り合いは沢山いない。たぶん自分のことじゃないだろうなと思いながらもゆっくり振り返ってみた。背後に居た笑顔の人を見て納得した。なるほどこの人ならここで会っても不思議ではない。その人は強面の連れの人が2名いたので、軽く挨拶をして面会入り口に走り出した。

面会所の入り口で、録音装置や電話や面会に必要の無いものはロッカーに預けるというルールなので、携帯電話、充電、財布などをロッカーに預けた。面会所は2階にある。奥に進んでいくときに3名くらいとすれ違った。また知り合いがいるんじゃないかとドキドキした。右に曲がるとエレベーターがあり2階に行くことができた。2階に到着すると面会の受付があり、5番の部屋に案内された。僕が部屋に入って2分くらいすると塀の中に入っているタイ人女性が現れた。

僕を見るなり笑顔になった。面会時間は20分ということなので聞き取りをすぐに始めた。まず彼女が僕にしてほしいことは、ここから出して欲しいということだ。そしてどうしてこういうことになったか順序だてて聞いた。まず2018年9月、日本人の友達でIという男性に誘われてトルコに遊びに行くことになった。I氏はトルコに一人で行くのはつまらないので彼女に一緒に行って欲しいと誘ったそうだ。塀の中にいるタイ人女性とI氏とは家族ぐるみの知り合いだそうだ。羽田空港から北京経由でトルコに到着。その数日後にトルコから北京経由で羽田空港に到着した。

ここからが少し日本語が分からなかったのだが、到着した羽田空港でスーツケースを開けたら、そこには自分が知らない1キロくらいの粒状のものがあった。それがコカインだったということだ。これは2018年10月1日の出来事だったとのこと。それから今日2020年3月9日まで1年5カ月ずっと塀の中にいるそうだ。一回裁判のようなものをして自分で話をする機会があったそうだが、状況は変わらず今日に至るとのこと。一人いる娘さんはたまに会いに来てくれたことがあるらしい。でも平日は忙しいし、母親の可哀そうな姿を見たくないのか、あまり面会には来ないらしい。なんでもっと早く僕とか誰かに助けを求めなかったんですか?と聞くと、どこに連絡していいか分からなかったと言う。どうして僕の連絡先が分かったんですか?と聞くと、拘置所の中には月刊ワイワイタイランドがたくさん置いてあるらしいです。だから僕が差し入れで3冊持ってきたと言うと、もうたぶん読みましたよと彼女は言った。面会時間の最後でタイ人の女性は僕に「ここから出てタイマッサージのお店をやったら遠藤さんのホームページをやります」と言った。僕は「ここから出るのを助けるからマッサージもしてくださいね」と言った。

面会所を出て、受付に行ってタイ語の通訳サービスについて確認した。タイ語の通訳者は月1回だけ来るらしい。3月の担当日はつい先日終わったばかりで、今度は4月1日に来るという。僕が自分でタイ語通訳を連れて来ていいですか?と聞くとダメだと言われた。

拘置所を出たのは15時45分。僕はいまこれからどうしたら彼女を塀の外に出してあげられうか方法を考えているところです。

写真・文 遠藤誠(2020年3月9日)

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エンディ・タイランド(本名:遠藤誠)は実在のタイ王国専門ジャーナリスト。愛称はエンディ。活動はユーチューブや月刊ワイワイタイランドの『エンディ・タイランド』で見ることができる。『エンディ・タイランド』のテーマは、タイ王国に関する企業活動、芸術・スポーツ・料理・マッサージなど文化活動、最新テクノロジー、ミステリー、自然災害、果ては超常現象など。実況調やロードムービー調やコメディ調のスタイルでタイファン、タイ業界関係者、タイ人とその配偶者の日本人の皆さまに役立つ情報を伝えている。タイ料理の食レポのほか、ニュース性に富んだ情報を盛り込むジャーナリスティックな内容なので、巷間ではここからタイ情勢を勉強できると言われることもある。ユーチューブや月刊ワイワイタイランドに登場する人物・団体・名称等は実在のもの。出来事はすべてノンフィクションである。

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ABOUTこの記事をかいた人

遠藤誠。愛称エンディ。タイ王国専門ジャーナリスト。1987年よりタイコミュニティーに携わったことからタイ専門情報誌「月刊ワイワイタイランド」を創刊。タイの笑顔を求めて旅をしながら写真を撮り続ける。ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するタイ専門のトラベル・ジャーナリストでもある。雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、ユーチューブ、ウェブサイトなどへの寄稿、講演などを通して、新たなタイの旅先の提案をしている。毎月「月刊ワイワイタイランド」で最新の写真と面白い旅先の紹介を見ることができる。